2016年3月1日火曜日

青年A,29歳になる

その日,Aは誕生日を迎え29歳となった.夕食後には妻が用意してくれたイチゴのショートケーキを食し,妻と一緒に誕生日を迎えれたというささやかな幸せをケーキと一緒にかみしめていた.
思えば辛い一年だった,Aは昨日までの一年間を思い返しそうつぶやいた.不登校だった中学時代とどちらが辛かっただろうか.そんなことは意味のない比較だなと我に返り,炬燵から腰を上げ風呂へ向かった.

髪の毛は自然乾燥させている.それが彼の流儀だ.

就職が決まり来月からの新生活に不安と期待を胸に,風呂から上がった彼は床につく.東京で楽しく過ごすためには,29歳はどんな年になるのだろうか,誕生日に退学届を出す羽目になるとは,などと様々な思いに耽りながら,そして翌日の寝癖を覚悟しながら,彼は目をつぶった.


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